リスク社会の科学教育―科学を統治する市民を育てるー

このブログは、大学で科学教育を担当している筆者(荻原彰)が、現代の巨大な科学技術を市民が適切に統治するため、科学教育はどうあるべきかを考えていくブログです

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

科学の変質過程-3つのモデル

近代細菌学の基礎を築いたことで知られるルイ・パスツールは「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」と語ったという。この言葉は、戦争にまで至った当時のフランスとプロイセン(現ドイツ)の対立を反映している。彼は好戦的であったというわけでは…

専門性という檻

日本が近代大学制度を導入した時、ヨーロッパでは、すでに自然哲学からの自然科学の専門分化が進行し、工学や農学も学問としての専門性を確立しはじめていた。日本の大学は基本的に、その当時のヨーロッパの学問の枠組みをそのまま日本に移植したものであっ…

二人の科学者

マイケル・ファラデーは、電磁場の基礎理論を確立し、電動機技術の基礎を築いたイギリスの物理学者である。クリスマス・レクチャー「ろうそくの科学」でも知られている。アインシュタインやニュートンと並ぶ科学界の巨人であるが、世俗的名誉には関心がなく…