リスク社会の科学教育―科学を統治する市民を育てるー

このブログは、大学で科学教育を担当している筆者(荻原彰)が、現代の巨大な科学技術を市民が適切に統治するため、科学教育はどうあるべきかを考えていくブログです

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

判断を統合する―善き生のための思慮深さ 序説

日本の科学技術社会論を主導し,その基礎を作りあげた村上陽一郎は「科学者とは何か」(1)の中で「缶ミルクの教訓」と題してアメリカの食品会社の発展途上国支援の失敗を述べている.その会社は善意のキャンペーンとして,飢餓に悩むアフリカの家庭に自社…

統計的議論についての着目点

先に疫学を市民教育の場で扱う際には「統計的手法(ある程度は必要)は最小限度にとどめ,意思決定の教訓となるような事例(公害病等疫学が意思決定の根拠として利用された事例)における疫学の利用を,必要に応じて法的・制度的・倫理的な側面にも触れなが…

「分析による麻痺」を避ける 及び 疫学は個人ではなく集団を考える時に意味を持つ

1 「分析による麻痺」を避ける 一般に科学においても法律においても統計学で言う第一種の過誤(因果関係がないのに因果関係があることにしてしまう,犯人でないのに有罪にしてしまう)よりも第二種の過誤(因果関係があるのに因果関係がないことにしてしま…