リスク社会の科学教育―科学を統治する市民を育てるー

このブログは、大学で科学教育を担当している筆者(荻原彰)が、現代の巨大な科学技術を市民が適切に統治するため、科学教育はどうあるべきかを考えていくブログです

リスク社会とその特性―リスクの不平等な配分とリスクの受苦の不可視化

「ひび割れたNUCLEAR POWER 雨に溶け風に乗って 受け止めるか 立ち止まるか どこへも隠れる場所はない It’s A NEW STYLE WAR」 浜田省吾 A NEW STYLE WAR ベックの言う「「他者」の終焉」を端的に表した詞ではないだろうか。リスクは地球的規模で遍在してい…

リスク社会とその特性―リスク認知・リスク処理の科学技術への依存

1928年に開発されたフロンは、人体に毒性がなく、不燃性で化学的に安定している理想的な冷媒として、あるいは断熱材、発泡剤、半導体等の洗浄剤として1960年代以降急激に普及した。しかし、1974年にアメリカのローランドがNature誌に提出した論文がきっかけ…

リスク社会とその特性―遍在と破滅―

ベックのいうリスク社会とは、富の分配とそれをめぐる争いが社会の中心的課題であった「貧困社会」が「人類の技術生産力と社会福祉国家的な補償と法則がある水準に到達」し、貧困が緩和され、同時に「危険と人間に対する脅威の潜在的可能性が、今までになか…

社会の科学化 科学の社会化

1989年11月9日、東ドイツ政府は東西ベルリン間の国境検問所を開放し、翌日、ベルリンの壁の撤去作業が始まった。この事件を契機にすでにポーランドやハンガリーで進みつつあったいわゆる東欧革命が加速し、1990年には全東欧で社会主義政権が消滅した。革命は…

「文明社会の野蛮人」と科学教育

科学論研究者の小林信一は、スペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセットの「文明社会の野蛮人」(科学技術の産物をあたかも自然物であるかのようにみなし、科学技術の成果は享受するが、科学技術を生み出す努力やプロセスには無関心な人々)という概念を援用…